ドラえもん学 (PHP新書)

ドラえもん学 (PHP新書)

ドラえもん学 (PHP新書)

 ふらっと本屋に寄ったところ見つけたこれ。買ってみて読んだものの、正直期待ハズレだった。
 本は全3章からなる。大雑把に書くと、第1章はドラえもんの歴史。第2章はドラえもんが日本国内のみならずどれだけ海外でも愛されているかについてを。第3章では名作のあらすじについて。
 私はマニアというほどドラえもんをよく知っている訳ではないから、1,2章は新発見もあったりで、まだ楽しめた。問題は第3章だ。
 第3章は「文字のみでマンガ作品のおもしろさを読者に伝えることができるかの実験」という趣旨で展開されている。読んでみると、3章は小説風とまではいかないが、セリフを引用しつつ名作を文字のみで表現している。これにはいったい何の意味があるだろう。たいていは私も読んだことのある有名な話で、マンガの情景が頭に浮かんでは来たが、原作を読んでいない人がこのあらすじ紹介を読んでどう感じるのか。ただのネタバレとも取りかねないそのまんまなあらすじ紹介。正直、これを読むくらいならマンガそのものを読んだ方がいい。実際問題、この本にはマンガのコマが一切使われてない。発売元が小学館じゃない以上、権利問題としていろいろ難しい点はあるとは思うが、このことが最大の弱点になっているように思う。表紙も非常に地味。PHP新書はどれもそうだけど…。
 そもそも私がこの本を購入した理由は、ドラえもんの話を大人の視点から深く考察し、唸るような分析がなされた論文が読みたい、というものだ。ドラえもんの話は、不意に哲学的であったり、鋭い風刺や名言が隠れている。それらを紹介したサイトもあり(「ドラえもん 名言」で検索)、「ドラえもん学」というタイトルが付いている以上、そういった内容を期待した。3章には、そういう考察や作者の解説といったものがあまり見られず、ただの「名作あらすじ紹介」の章になってしまい、非常に薄っぺらい。
 作者の横山泰行という方は、富山の大学でドラえもん学を始め、授業でドラえもんのマンガを古典のように扱いながら展開しているといった報道は私の記憶にあった。本文中には単行本の初版を集め、「開運!なんでも鑑定団」で視聴者からお宝を買い求めたり、ドラえもん文庫なるものを設立したり、全セリフをエクセルでデータベース化したり、といった記述もある。これだけやっていて、さぞ大学教授ならではの濃いものが読めると思ったのに、肩透かしをくらった。「ドラえもんはみんなに愛されているんだな」「素晴らしいマンガだな」という読後感想文は残ったが、このドラえもん学を読まなくても、それは分かっていることである。「大好きです!これだけドラえもんについて調べました!」といった作者の愛は十分感じられるのだが…。